前回の投稿を読んだ方は簡単に用途に応じたスーツの生地選びが出来るようになりました。例えば
- 破れにくく仕事につかえる生地
- 式典でつかえる高級感がある生地
も選ぶことができるようになっていますよね。
(前回の投稿はこちらをクリック)
生地の知識としては前回でも十分なのですが、今回は生地についてもう一歩踏み込んだ残酷な知識をお伝えします。それは「高級なスーツほどすぐにダメなる。」という事です。
品物が高価なほど物持ちが良いと思っていませんか?実はスーツに関しては一概にそうとは言えません。なぜなら高級なスーツほど糸が細いからです。そこで今回は高級スーツほど物持ちがなぜ悪いのか理解していただくために
- 糸の細さについて
- 高級スーツのメリットとデメリット
- 高級スーツの代表的なブランド
を解説しており、最後までこの記事を読めば
- 高級スーツとはどのようなスーツなのかを理解できます。
- 高級スーツの使い方が分かります。
- 高級スーツの定番ブランドが分かります。
実はこれを記載しようと思ったきっかけは、私の後輩(スーツ屋とは別の職業)が10万円以上のスーツをダメにしてしまった過去があります。
私がスーツ屋になる前の事です。社会人も4年くらい経った12月、ボーナスも支給されたので後輩と一緒に買い物に出かけました。その時に後輩は自分のご褒美にと10万円以上するスーツを購入しました。その購入したスーツはやはり値段だけあって、見栄えも良くカッコよかったです。
購入後、後輩は毎日のようにそのスーツを着用するようになり、後輩自身も
「10万円もしたスーツなので物持ちも良いに決まっています。」
と言っていたことから、耐久性も問題ないと信じておりおりました。
しかしある日の飲み会で事件が起こりました。そのスーツが破れてしまったんです。
原因は着用頻度が多かったのと、飲み会ではしゃぎすぎて無理なストレスがかかってしまったからでした。
たしかに今考えると着用頻度が多く、スーツの使い方は間違っておりましたが、本人は一生もののスーツにすると言っていた反面ショックも大きかったようです。
この記事をお読みの皆様はこんなアホな使い方はされてはいないと思います。しかし私の後輩も知識があれば避けれたことです。
なので、このような事が皆様にも起こらないように高級生地についてしっかり解説していきます。
はじめに覚えてほしい事
高級生地を理解する上で知っておいていただきたいのが糸についてです。まず糸が細くなるとこのような特性があります。
- 肌触りが良くなる。
- 光沢がきれい。
つまり糸が細ければ細いほど上記の特性があります。では、どのくらい糸が細いのかはどこを見たら分かるのか?という疑問が出てくるかと思います。それが今からお話する「番手」と「SUPER」です。
糸の細さについて(番手)

糸の細さを表す単位として「番手」というものがあります。これは重量1,000gの綿を、何メートル伸ばせる糸なのかを表しています。例えば
- 70番手=1,000gの綿を70メートル伸ばせる糸。
- 120番手=1,000gの綿を120メートル伸ばせる糸。
つまり番手の数字が上がると糸の伸ばせる距離が長くなる分、糸も細くなっているという事です。
なので肌触りがよく光沢が強い高級な生地は番手が大きいものが多いと言えます。
繊維の細さについて(SUPER)

糸を構成しているのが原毛の繊維ですが、その繊維の細さを表す単位が「SUPER」です。こちらもSUPERの数字の表記が大きくなるにつれ、繊維は細くなっていきます。具体例を挙げると以下のようになります。
- SUPER80’s=繊維の細さ19.5ミクロン
- SUPER180’s=繊維の細さ14.5ミクロン
こちらも数字が大きいほど肌触りがよく光沢が強い高級な生地と言えます。
高級生地の特徴

では本題の高級な生地についてです。結論から申し上げると高級な生地は番手の数字とSUPERの数字が大きいです。つまり糸が細く、その糸を構成している繊維も細いということです。ではメリットとデメリットはどうなるかについては下記をご覧ください。
メリットとデメリット
メリット
- 光沢が飛びぬけてきれいで高級感がある。
- シルクのような肌触り
- 生地が柔らかく着心地が良い。
デメリット
- シワになりやすい。
- 虫に食われやすい。
- 糸や繊維が繊細なので耐久性に欠ける。
つまりスーツを着た時の見栄えが良く、しかも肌触りがよいため気持ちいい。しかし糸自体が繊細なので普段使いするには不向きかつ生地はデリケートという事です。
高級生地のスーツが適している場面
普段使いは不向きですが以下の所では最大限の力を発揮します。
- 結婚式
- パーティー
- 子供の入学式や卒業式 など
つまり大きいイベントにかなり適しています。
代表的なブランド
最後に代表的なブランドの一例を記載しました。どのブランドも各国の首相や著名人が着用しており世界的知名度を誇っています。
◆ブランド名 エルメネジルド・ゼニア ロロピアーナ ドーメル スキャバル
たとえばゼニアであればこのような方々に
- 渡邊謙さん
- 松井秀樹さん
- ブルースウィルス
- ケネス・ブラナー
スキャバルであればこのような方に愛用されています。
- プーチン大統領
- クリントン元アメリカ大統領
- オバマ元アメリカ大統領
- 長嶋茂雄さん(元読売巨人軍) など
ほかにもロロピアーナはルイヴィトンに、ドーメルはパリコレ常連のブランドに生地提供しています。
まとめ
- 高級なスーツほど光沢がきれいで高級感があり、なおかつ肌触りも良い。しかしその分糸や繊維が細くなっており耐久性に欠けることが多い。
- 糸の細さは番手、繊維の細さはSUPERで確認できる。
ちなみに高級ブランドにも耐久性がある生地もあります。そのところは後日触れていこうと思います。
では次回のWEEK5も生地についてですが、ストレッチや撥水加工の機能性を持った生地についてお話していきます。